第16章

水原歩美は体が強ばった。彼女をいじめていた人物は、まさに高橋司だったのだ。

彼女が顔を上げて見ると、高橋司が沈んだ眼差しで彼女を見つめていた。

思わず歯を食いしばり、急いで視線を逸らした。

間もなく医療スタッフが病室の移動にやってきた。

介護士がいたので、水原歩美たちは特に手伝うことはなく、ただ新しい病室まで付き添い、その後も水原の父と少し話をした。

話をするといっても、実際は水原歩美と父親が話し、高橋司は黙って見ているだけだった。

「歩美ちゃん、司くんは会社の用事があるし、あなたも仕事があるんだから、帰りなさい」

水原家の使用人の田中さんも急いで言った。

「ここには医師も看...

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