第19章

鈴木雪子は彼女の視線の先を見て、急いで言った。

「この病室はずっと薬品の匂いがして、私、嫌なんです。それで司くんがこのアロマを持ってきてくれたの」

「水原先生、このアロマに何か問題でも?」

水原歩美は振り向いた。

「特に問題はありませんよ。良い香りです」

鈴木雪子の瞳が輝いた。

「あなたもこの香りが好きなの?」

「初めてこの香水の香りを嗅いだとき、司くんにぴったりだと思って、プレゼントしたの」

「こんなに長い年月が経っても、彼の好みはこれなんだね」

水原歩美は彼女の言葉を聞いて、急にそのアロマの香りがそれほど心地よく感じなくなった。

それどころか、嗅ぐと胃の中が荒波のよう...

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