第20章

しばらくすると、介護士が鈴木雪子をトイレから扶き出してきた。

部屋の空気が重くなっていることに気づき、介護士は恐る恐るとした表情を浮かべていた。

高橋司は冷ややかな目で彼女が鈴木雪子をベッドに寝かしつけるのを見届けてから、冷たく言い放った。

「今すぐ出て行け。もう来なくていい」

男の声は氷のように冷たく、一切の余地を与えない響きだった。

介護士は慌てた。高橋司の支払う給料が高いだけでなく、この病院自体が高橋家のものだ。彼に解雇されれば、Y市のどの病院も彼女を雇おうとはしないだろう。

「高橋社長、私はただトイレに行っただけで、私は…」

彼女の言葉が終わらないうちに、高橋司はさらに...

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