第26章

伊藤圭は頷いた。

「わかった!」

電話を切ると、すぐに位置情報を水原優子に送り、車を路肩に停めた。

「歩美ちゃん、ごめん、どうやら僕は力になれそうにないよ」

「でも鈴木様が出てくれるなら、事態は好転する余地があるから、心配しないで」

水原歩美は複合商業施設の世界に身を置いていなかったが、あんな凄腕のお姉さんがいるおかげで、この鈴木様のことは知っていた。

かつて水原家が栄華を誇っていた頃、鈴木様は水原家の上客だった。

ただ、その後水原家が没落していくにつれ、以前水原家と親しかった名家たちは徐々に距離を置くようになっていった。

鈴木様も水原家との付き合いはずいぶん途絶えていたのだ...

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