第35章

高橋司は鈴木雪子に何か一言言うと、車に乗り込んだ。

水原歩美は彼らのためにドアを閉め、別の車へと向かった。

文宣おばあちゃんは慌てて彼女の後を追った。今の高橋おばあさんの機嫌が悪いのは明らかで、彼女はその矛先に立ちたくなかった。

鈴木雪子は二台の車が走り去るのを見つめながら、思わず拳を握りしめた。

文宣おばあちゃんは水原歩美の表情が平静なままであることに気づいた。まるで先ほど他の女性と引っ張り合いをしていたのが自分の夫ではないかのようだった。

「司くんのこと、心配じゃないの?」

水原歩美は困惑した顔をした。高橋司は高橋おばあさんと一緒にいるのだから、何を心配することがあるというの...

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