第37章

公園町の方では、林さんは電話を切った後、陰鬱な表情の男性を見つめながら、おずおずと言った。

「若旦那様、奥様は今晩お帰りにならないそうです。水原社長のところで少し滞在すると仰っていました」

高橋司は軽く頷いた。

「ああ」

声は静かで、表情は冷ややか。まるで単に部下の行方を尋ねているかのようだった。

林さんは内心焦りながら、探るように言った。

「若旦那様、奥様をお迎えに行かれてはいかがでしょうか」

「少し滞在するとか言ってたじゃないか。住み飽きたら自然と戻ってくるさ」

林さんはこの鉄のような直情径行な男を見て、少し焦った。

「若旦那様、最近は鈴木雪子さんのことで奥様との仲がぎ...

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