第46章

中村芳子は水原歩美の淡い瞳色を見て、勝利者の喜びが微塵もないことに気づき、眉を少し上げた。

「嬉しくないの?出ていかなくても彼女をボロボロにしたのに」

水原歩美は平然とした表情のままだった。

「何も感じないわ」

この複雑に絡み合った感情の中で、彼女も勝利者ではなかった。

高橋司を何年も密かに思い続け、そして三年間夫婦として過ごしても、最初から最後まで高橋司の心を手に入れることはできなかった。

どうして勝利者だなんて言えるだろうか。

中村芳子は言葉を詰まらせた。

「あなたと彼の結婚、本当にもう余地はないの?」

水原歩美はうなずいた。

エレベーターに乗ると、中村芳子は黙り込ん...

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