第49章

高橋司は眸を沈め、冷たく鋭い視線で水原歩美を見た。

彼女の足取りは一切止まることなく、真っ直ぐに立ち去った。

高尾執事は傍らに立ち、胸が高鳴り、高橋司の怒りが自分に向かうのではないかと恐れていた。

幸い高橋司は水原歩美の去っていく背中を沈んだ眼差しで一瞥しただけで、すぐに視線を戻した。

彼の表情が一瞬沈み、すぐに冷淡さを取り戻した。

「私のオフィスの引き出しにある協議書を彼女に渡してくれ」

彼の声には温かみが全くなく、冷たく高尾執事に指示した。

高尾執事は一瞬驚いたが、すぐに頷いた。

「かしこまりました」

鈴木雪子は顔中に疑問を浮かべていた。以前なら、どんな協議書なのかと尋...

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