第51章

「一緒に見に行きますか?」高尾執事は水原歩美の意向を伺うような表情を浮かべた。

水原歩美は軽く首を振った。

「いいえ、結構です」

高橋司は彼女が自分の交際圏に足を踏み入れることを好まなかった。

そのため、結婚して三年間、高橋司は彼女を大師匠とその妻の前に連れて行くことは一度もなかった。

今や彼女と高橋司は協議離婚をしたのだ。彼女には立場もないし、二人の老人を煩わせる必要もなかった。

高尾執事はしどろもどろと頷いた。

「では、先に入ります」

水原歩美は「うん」と一言返し、自分のオフィスへと歩き始めた。

高尾執事は彼女の感情に大きな動揺がないのを見て、思わずため息をついた。

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