第55章

高橋司は渡辺おばあさんとの会話を終え、病室から出てきた。

鈴木雪子は高橋司の姿を見るなり、胸がどきりと高鳴った。

「司くん……」

彼女はすぐに視線を高橋司に向けた。

高橋司は鈴木雪子に淡々と一瞥をくれただけで、そのまま横を通り過ぎた。

鈴木雪子は慌てて後を追い、三歩歩いたところで、突然自分が病院に来た目的を思い出した。心中では不満を感じながらも、足を止め、渡辺おばあさんの病室へと向かった。

高橋司は水原歩美のオフィスの前を通りかかったとき、歩みを緩めた。

高橋司は横目で室内の水原歩美を見た。

彼女は机の上の資料に目を落とし、秀麗な眉を少し寄せ、表情は真剣そのものだった。

誰...

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