第57章

彼の深く暗い瞳が真剣に彼女を見つめていた。

水原歩美は言葉に詰まり、苦笑いして言った。

「本当は、ちゃんと運転して、安全に気をつけてねって言おうと思ってたの」

まさか、その言葉を口にする前に事故が起きるなんて。

高橋司は軽く頷いた。

「わかった」

「中に入りなよ」

水原歩美は頷き、病院の中へと歩き始めた。

病院の玄関に着いた時、彼女は足を止め、振り返った。高橋司は彼女が振り返ったのを見て、手を振り、車へと戻っていった。

水原歩美は唇を引き締め、まだ視線を戻さないうちに、横から歩いてくる鈴木雪子の姿が目に入った。

鈴木雪子は少し離れたところに立ち、探るような目で水原歩美を見...

ログインして続きを読む