第59章

高橋司はエレベーターに足を踏み入れ、板面の鏡に映る自分の姿を見つめながら、軽く身なりを整えた。

エレベーターのドアが水原歩美の科がある階で開いた。

渡辺おばあさんの病室へ向かう廊下は、水原歩美のオフィスの前を通らなければならない。

彼女のオフィスに近づくにつれ、胸の内に期待の感情が膨らんでいく。

オフィスの前を通りがかり、中を覗き込んだが、水原歩美の姿はなく、思わず足を止めた。

隣のオフィスから中村芳子が出てきて、水原歩美のオフィスを見つめる高橋司の視線に気づいた。

「高橋社長、水原先生をお探しですか?」

高橋司は答えなかった。

中村芳子は眉を少し上げ

「水原先生は実習生を...

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