第10章 騙された愚か者

そうだとしても、中村健が彼女を本当に宴会に参加させるわけがないだろう?

これは祖父の誕生祝いの宴なのだ。参加者は代々付き合いのある家柄か、親しい友人ばかり。そんな場所に彼が鈴木南を連れてくるなど、一体どういうつもりなのか。

何と言っても、今日、彼女は中村健の妻として出席しているのだ。彼のこの行いは、公然と彼女の顔に泥を塗るものではないか。

ましてや、祖父もここにいるというのに、祖父の顔をどこに置くつもりなのだろう。

たかが鈴木南一人のために、彼は中村家の面子さえも捨て去るというのか?

「健さん、私、こんなことをしてご迷惑じゃないかしら? やっぱり、私、帰った方が……」

彼女は伏し...

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