第12章 あなたと健さんは離婚できない

日中の喧騒がゆっくりと薄れていく。

中村グループのような旧家にとって、客人の送迎は日常茶飯事だ。

夕刻にもなれば、客は一人、また一人と去って行き、中村家の古屋敷も次第に静けさを取り戻していく。

昼間が公の場であったとすれば、夜は家族だけの宴。中村グループの身内だけが残ることを許される。

例年もそうだった。

中村健と鈴木七海は中村家の古屋敷に泊まり、祖父の誕生日を共に祝う。

この時こそが、中村家が真に家族団欒の時を迎える瞬間なのだ。

執事の服部忠は、とうに人を遣わして豪華な宴席を整えさせていた。

服部忠は中村家で数十年仕え、祖父とは兄弟同然の間柄。執事というよりは、むしろ兄弟に...

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