第38章 彼女は私の女

鈴木七海は僅かに虚を突かれた。

ファーストラブは、彼女に贈るために彼が落札したものだったというのか?

「君が気に入ると思ったんだ。君の母親の形見だとは知らなかった」

彼の口調は相変わらず淡々としていて、感情のかけらもなかった。

鈴木七海の胸に熱いものが込み上げ、すぐにまた切ない酸っぱさが広がった。

今更そんなことを言われて、何の意味があるというのだろう。もう離婚する身なのだ。

いっそ、彼がもっと冷酷でいてくれたならいいのに。そうすれば、未練なく去ることができる。

もし彼が少しでも優しさを見せれば、きっと自分はもっと苦しく、悲しくなるだけだ。

だから、彼女は振り返らず、冷たい声...

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