第29章

桜井美也は池下紫に連れられて、彼女が経営する上品な茶楼にやって来た。静かな環境に包まれ、茶の香りが漂うその場所で、二人は窓際の席に座った。池下紫は自ら桜井美也に一杯の香り高いお茶を淹れた。

「飲んでみて、」池下紫は微笑みながら言った。

「これは中国の西湖から採ってきた龍井茶よ。とてもいい味がするの」

桜井美也は慎重に一口飲んでみると、茶葉の清々しい香りが口の中に広がった。彼女は心から感嘆して言った。「本当に美味しいです、おばさんのセンスは素晴らしいですね」

池下紫は桜井美也を見つめ、目に優しさが浮かんだ。彼女は静かに言った。

「美也さん、あなたと誠が結婚してもう何年か経つわね?」

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