第31章

撮影スタジオ内、ライトが明滅し、音楽が響き渡る。池下誠はモニターの後ろに立ち、MVを撮影中の道村彩音を真剣に見つめていた。

突然、彼の携帯が鳴り、思考を中断させた。

池下誠は携帯を取り出し、ディスプレイに「おばさん」と表示されているのを確認すると、眉をひそめながら少し離れた場所に移動して電話に出た。

「もしもし、おばさん?」池下誠は小声で言った。撮影中の現場を邪魔したくなかった。

電話の向こうからおばさんの焦りを帯びた声が聞こえてきた。

「誠、大変よ!美也が事件に巻き込まれたわ!」

池下誠はハッとして、思わず携帯を落としそうになった。

「どういうこと?桜井美也がどうしたんだ?」...

ログインして続きを読む