第33章

桜井美也は目を上げ、再び池下誠と視線を合わせた。思わず両手がテーブルクロスを強く握りしめる。

どうして彼は知っているの?

池下誠の冷たい眼差しは、まるで冷たい矢のように桜井美也の胸に突き刺さった。

「そんなに彼のことが好きなら、なぜ俺と結婚したんだ?」

その言葉に桜井美也は顔色を変え、テーブルクロスから手を徐々に離し、表情さえも少し引きつった。

「何ですって?」

池下誠は立ち上がった。

「俺の言ってることは間違ってるのか?お前が好きな奴はケンという名前だろう。なのに最後には俺と結婚した。あいつはお前の心の中の英雄で、今でも忘れられないんだろう」

桜井美也の心に冷水を浴びせられ...

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