第34章

翌日。

桜井美也が目を覚ますと、池下誠がネクタイを締めている姿が見えた。

彼女が起きたのを見て、池下誠は言い聞かせるように言った。

「牛乳をベッドサイドに置いておいたから、起きたら飲みなさい」

桜井美也は思わずベッドの頭の方を見て、尋ねた。

「どこに行くの?」

「少し用事があるんだ」池下誠は彼女を見つめた。

「運転手に先に会社まで送らせるよ」

桜井美也はベッドの縁に座り、黙って池下誠を見つめていた。

池下誠は身支度を整えると、ずっと黙っている桜井美也のところへ歩み寄り、ベッドサイドの牛乳を手に取って彼女に渡し、優しく言った。

「温かいうちに飲んで」

桜井美也は受け取ると...

ログインして続きを読む