第35章

「なるほど、彼らは夫婦だったのか」

彼はもっと敬意を示さなければならない、以前のようにはいかない。

桜井美也は知っていながらも尋ねた。

「誠は中に入ったの?」

「社長は……つい先ほど入られました」清水和也は言いよどんだ。

桜井美也は入口の記者たちを見つめた。やはり彼女の予想通りだった。

道村彩音のためなら、彼はいつも躊躇なく行動し、嫌疑を避けようともしない。

清水和也は彼女が誤解するのではと心配し、説明を加えた。

「奥様、誤解なさらないでください。社長が病院に来られたのは仕事の件で——」

桜井美也は軽く微笑み、答えた。

「誤解なんてしてないわ。説明しなくていいの」

清水...

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