第36章

「そんな言葉、どうして口にできるの」

道村彩音はショックを受け、泣き止み、呆然とした瞳で池下誠を見つめた。まったく信じられない様子だった。

これは彼女が知っていた人物とは違った。

以前の彼は彼女のことを一番気にかけていて、彼女がつらい思いをするのを見過ごすはずがなかった。

今の彼は別人のようで、彼女を憐れむこともなく、基本的な慰め方さえも忘れてしまったかのようだった。

彼女はこれが池下誠だとは信じられなかった。

きっと何か苦しい事情があるのだ。

道村彩音は彼の手を離し、無理に笑顔を作ろうとしたが、どうしても笑えなかった。

「清算って…どうやって私と清算するつもり?」

池下誠...

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