第42章

それを見て、伊藤美咲はお酒を受け取った。

「小野社長、桜井さんはお酒が飲めないので、私が代わりに頂きます」

小野社長は明らかに不満そうな顔をした。

「それじゃあ誠意が感じられないな」

伊藤美咲は途端に居心地の悪さを感じた。社会経験の少ない彼女には、そこまで円滑に立ち回ることができず、緊張のあまり間違いを犯すことを恐れ、おどおどとしていた。

「桜井さん、お前のお酒を部下に代わりに飲ませるなんてどういうことだ」

二人とも女性であることが、小野社長により大きな図々しさを与え、言葉遣いもぞんざいになっていた。

「お前は池下社長の代理なんだろう。池下社長ならいつも我々と酒を酌み交わすのに...

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