第44章

風呂場のドアを開けると、桜井美也が浴槽の中で必死に体を洗っているのが見えた。音一つ立てず、彼に聞こえないよう気をつけている様子だった。

「桜井美也、やめろ!」

彼は急いで近づき、自分を傷つけようとする彼女の手を掴んだ。

桜井美也は目を赤くして、掴まれても逃げようとするだけで、必死にもがいた。

「触らないで、私、汚いから……」

「お前は汚くない」池下誠は低い声で言い、彼女が自分を傷つけないよう両手で抱きしめた。

「お前は決して汚くなんかない」

桜井美也の頭の中には机の上に押し付けられた光景しかなく、全身が吐き気で震えていた。池下誠に触れられるだけで自分が不潔に感じられ、彼女は首を...

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