第59章

その相手は少し疑ってから言った。

「オフィスで桜井さんを見かけた人はいるけど、常に誰かが見張っていたわけではないし、ずっとそこにいたとも保証できない」

これは一つの謎だった。

彼は当初から疑いを持って桜井美也に尋ねていた。

彼の印象では、桜井美也はいつも彼に対して節度を保ち、失敗したことなど一度もなかったので、彼はそれほど疑うことはなかった。

当時を思い返すと、桜井美也はどこか慌てていたように見えた。

彼に近づける女性は彼女しかいない。

しかし、その人物が道村彩音でないことは確かだった。

池下誠は電話を切り、パソコンの電源を落として書斎を出た。

寝室に向かうと、中は明るく灯...

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