第60章

彼女はもう何かを望むべきではなく、ただ二人の関係を原点に戻すべきだった。

それこそが彼女のなすべきことだった。

池下誠は全てが普通だと感じる一方で、何か違和感も覚えていた。彼女の青白い顔を見て、彼はやはり厳しく問い詰める気にはなれず、こう言った。

「次はこんなに勝手に一人で出かけないでくれ。少なくとも携帯を持って、誰かを連れていくんだ。そうすれば俺がすぐに君を見つけられる」

桜井美也は苦笑した。彼はまだ何を演じているのだろう。

彼女を心配しているふりをして、彼女への罪悪感を埋め合わせようとしているのか?

彼女は彼の芝居に付き合うべきなのだろうか。

「わかりました、言う通りにしま...

ログインして続きを読む