第11章

鷺沢雪紘は、腕の中に飛び込んできた女を見下ろした。

衣服は乱れ、肩が露わになっている。

ワインの染みが広がり、鼻を突くほどのアルコール臭が漂っていた。

車外にいた中年男が追いつき、怒鳴り声を上げた。

「このアマ、降りてきやがれ!」

罵声を浴びせた直後、男は車内の鷺沢雪紘の冷徹な黒瞳と目が合い、凍りついた。

男の勢いは瞬時に萎んだ。

「さ、鷺沢社長……? まさかここにいらっしゃるとは。てっきりもうお帰りになられたものと……。なぜ中へ入られないのですか?」

鷺沢雪紘は問い返した。

「この女は、あんたの連れか?」

男は言葉を詰まらせた。

鷺沢雪紘の真意が読め...

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