第27章

「きゅうちゃん?」

もふもふとした狼犬の頭が、水無瀬柚季の首筋にぐいぐいと押し付けられる。鼻をくんくんと鳴らし、次の瞬間、ざらりとした舌が彼女の頬を舐め上げた。

顔中が唾液でべとべとになる。

けれど、柚季の胸には喜びが溢れた。

「きゅうちゃん、どうしてここにいるの?」

子犬の頃から育ててきた、大切な家族だ。だが実家が没落し、さらに妊娠が重なったことで、泣く泣く手放すしかなかった。

里子に出した当初は、喪失感に苛まれたものだ。

きゅうちゃんがいじめられていないか心配で、来る日も来る日も眠れない夜を過ごした。

かなり大柄なきゅうちゃんが、甘えるように懐に身体を擦り寄...

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