第28章

まだ日が高いというのに、水無瀬柚季の体は芯まで冷え切っていた。

契約を交わした際、ある程度の覚悟はしていたつもりだった。だが、その条項までは契約書に記されていなかったのだ。

自分は逃げ切れる――そう、自らを欺いていたに過ぎない。

部屋の中には、彼女に背を向けてシャツのボタンを外す鷺沢雪紘の姿があった。

鍛え上げられた背中、そして圧倒的なまでの「雄」の気配に、柚季は居心地の悪さを感じて立ち尽くす。

ごくり、と喉が鳴った。

それは劣情ではない。恐怖と、そして羞恥によるものだ。

「木下さんに、薬を届けるように言われて……」

それ以外の指示は受けていない。

雪紘は...

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