第36章

車内には重苦しい沈黙が漂っていた。

木下矢は車を鷺沢雪紘の別荘へと滑り込ませた。鷺沢雪紘が車を降りるのを支えながら、彼は水無瀬柚季に声をかけた。

「鷺沢社長を落ち着かせたら、すぐに君を送っていくよ」

「うん、ありがとう」

水無瀬柚季は入り口に立ち尽くしていた。

不意に、鷺沢雪紘が口を開いた。

「入れ」

水無瀬柚季は呆気にとられ、鷺沢雪紘の視線とぶつかった。

「入れと言っている」

彼は冷ややかな口調で繰り返した。

水無瀬柚季は恐る恐る、ゆっくりと足を踏み入れた。

ソファのそばまで歩み寄った瞬間、鷺沢雪紘に手首を掴まれ、強引に引き寄せられた。

彼女はバラン...

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