第42章

「その傷、どうしたんですか?」

言葉だけを聞けば、それは紛れもない気遣いの言葉だった。

だが、鷺沢雪紘はグラスを指先で弄びながら、氷点下のような冷徹な響きでそう尋ねた。そこには、相手を押し潰すような凄まじい威圧感が漂っている。

綾小路楓太にとって、事の真相はあまりに恥ずべきものであり、到底口にできるような代物ではない。彼は言葉を濁した。

「空気の読めない女がいましてね。いきなり殴りかかってきたんですよ。まあ、もう処理は済んでますが」

「どう処理されたんですか?」

鷺沢雪紘は、いささか興味を惹かれたようだった。

なぜ彼が突然、こんな些事に興味を示すのか?

綾小路楓太...

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