第43章

水無瀬柚季はわかっていた。

企画部の一介の平社員にすぎない自分にとって、今回の騒動はあまりに大きく見えたかもしれない。

だが、それはあくまで見かけ上のことに過ぎない。

大海原に立つ波飛沫のひとつが、巨大なグループ企業全体の中でどれほど微小な存在か。もし木下矢が動いていなければ、上層部の耳に届くことさえなかっただろう。

「ありがとうございます」

彼女は心からの謝意を込めて言った。

木下矢は口元を緩めた。

「礼を言う相手が違うよ」

「では、どなたに?」

「考えてみなよ」

まるで禅問答だ。

水無瀬柚季は唇を引き結び、それ以上の詮索はやめて、踵を返して彼のオフィ...

ログインして続きを読む