第54章

病院での入院生活も八日目となると、水無瀬柚季は一分一秒たりともここに留まりたくないという焦燥に駆られていた。幸い、傷の治癒は遅々としていたが、それでも確実に快方へと向かっている。

ようやく、医師から退院の許可が下りた。

荷物をまとめていると、白樺信が手伝いにやってきた。手には薬瓶を持っている。

『パキシル』。

「主治医に確認したよ。傷の経過は順調だから、もう痛み止めは必要ないって」

水無瀬柚季は薬瓶を受け取り、強く握りしめた。

「ありがとう」

——

階下、黒塗りのセダンの車内。

木下矢はバックミラー越しに後部座席を窺った。

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