第55章

水無瀬柚季はまず、祖母の病室へと向かった。

祖母の回復ぶりは順調で、以前より精神的にも随分と元気そうだった。

病室を出て、柚季は少し迷った。

桜宮歌穂の様子も見に行くべきだろうか?

……いや、やめておこう。

すでに鷺沢雪紘とは一線を引いたのだ。今さら彼の母親を見舞うなど、意図的な機嫌取りだと誤解されかねない。

そう思って諦め、祖母のために水を汲もうと廊下に出た矢先のことだった。

運悪く、桜宮歌穂と鉢合わせしてしまった。

だが、歌穂の態度は以前と変わらず、穏やかで優しかった。

「お婆様のお見舞い?」

「ええ」

「顔色が悪いわね。どこか具合でも?」

「仕事...

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