第77章

水無瀬柚季は、階段を上っていくその背中を見つめていた。

プリンセスのようなドレスを身に纏った娘は、本当に愛らしい。あの子には、こういう生活こそがふさわしいのだ。

自分と共に東奔西走し、住む場所も定まらないような生活ではなく。

美味しいシーフードを食べたいと思っても、給料日まで待たなければならないような生活ではなく……。

光ちゃんの小さな姿が階段の踊り場に消えるのを見届けると、水無瀬柚季はバッグを手に取り、きびすを返した。

「行きましょう」

「このまま行っちゃうの?」

雨宮澪には理解できなかった。もし光ちゃんが、ママが帰ってしまったと知ったら、どれほど悲しむことか。

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