第7章

震える指先で、ずっと記憶の底に封じ込めていた番号をプッシュした。

コール音が鳴り、やがて回線が繋がった。

「西野さん……私を、助けていただけますか」

真夜中、窓を叩く乾いた音が響いた。

警戒心を抱きつつ近づけば、そこには年老いた執事が亡霊のように佇んでいる。

「夜月お嬢様」

彼は声を潜めて言った。

「ついてきてください。お嬢様にお会いしたいという方が、お待ちです」

躊躇いはなく、私は窓枠を乗り越えた。

執事の背を追って闇に沈む回廊を抜け、庭園の奥にある東屋へと向かった。

そこには、西野天介が立っていた。

月明かりに照らされたその姿は、いつにも増して頼もしい。

「秋葉さ...

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