第114話

全員の視線がそちらを向いた。

正面玄関から二人の男が現れ、その後ろに数人のスタッフが続いた。

私はファイルの写真で見ていたレックスフォード・コールドウェルだとわかった。

ニクス・コレクティブのトップ、今日までオフィスに一度も顔を見せなかった男。

だが、皆の視線を釘付けにしていたのはレックスフォードではなかった。

レックスフォードの一歩前を歩く、アシュトンだった。

彼の表情はいつものように読み取れず、仕事用の無表情な仮面をかぶっている。ズボンのポケットに両手を突っ込んでいた。

なのに、どこか機嫌が悪いのが伝わってきた。

ベルニーニの『ダヴィデ』像を思い起こさせた。ゴリアテに致命的な一石を投じる、...

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