第117話

ジェイスは目に見えて苛立ったように顔をしかめたが、その表情は私の背後にいるアシュトンを認めた瞬間に消え去った。

「友達だ」彼は不機嫌そうに呟いた。

「誰?」私は問い詰めた。

「ただの友達だって」

「名前を聞いてるの」

彼の目にいらだちがよぎる。答えるくらいなら私を殴りたい、とでも言いたげな顔だった。

だが、彼はもう一度私を頭のてっぺんからつま先まで眺めると、何かが変わった。苛立ちに代わって、したり顔の光が目に宿る。

「まあ、今あんたが知ったところで問題ないか。電話してたのはキャシーだ」

「キャシー? キャサリン・ヴァンス?」

彼は腕を組み、ゆっくりと頷いた。「ああ、そのキャシーだよ。まさか、っ...

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