第137話

アシュトンが会社を引き継いでくれたことには感謝していた。本当に。

でも、こうしてここに留まり――ブランドの顔として、自分のものでもない肩書きをぶら下げて人前に出るのは――もうすでに精神的に参ってきていた。

買収以来、私はひとつも新しいデザインを手がけていなかった。

スケッチパッドに向かう前に、どんなアイデアも自分で却下してしまっているような感覚だった。

塗料の煙にアレルギーがあるふりをして逃げ出せないか、なんて考えていると、スマホが震えた。

銀行からの通知。さらに二百万が振り込まれていた。

毎月の送金が、スケジュール通りに。

前回の分には、ほとんど手をつけていない。

まあ、服を何着かと、ハンド...

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