第144話

「とんでもない。でも、《ピンク・スター》を一目見られるなら、私の全て……魂も、未来も、何もかも差し出したって構わないわ」

五九・六〇カラット、ビビッドピンク、フローレスのダイヤモンドに触れることを想像して、私はよだれを垂らしそうになった。

「今夜、何か予定は? なんて、聞くまでもないか」イヴェインは自分の質問を手で払いのけた。「当ててあげようか。湾岸でのキャンドルライトディナー、BGMは弦楽四重奏の生演奏。わかってる、わかってる。お邪魔虫にはならないから」

私は何も言わなかった。

実を言うと、今夜は何も予定がなかった。

今朝、家を出るとき、アシュトンは何も言わなかった。

そして、半日...

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