第162話

私は彼らの行く手を遮った。

「ここにカメラがないのが残念ね。あったら、あなたがどれだけ恥知らずか、みんなに見てもらえたのに。私たち二人が同じ幻覚を見たとでも言うつもり?」

アレクシスは微笑みを崩さない。

「考えすぎですよ、ヴァンスさん」

声は甘く、砂糖菓子のように柔らかい。

こいつを生け垣に叩き込んでやりたい衝動に駆られた。

私はイヴェインに目をやる。

彼女は動いていなかった。

唇を固く結び、両手を握りしめ、肩をこわばらせている。

私はこの騒ぎの元凶に向き直った。

「私たちのこと、もう長年の付き合いでしょう。私たちがどういう人間か知ってるはずよ。イヴェインと私が、面白半分で嘘をついたとでも思う...

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