第168話

彼の全身はこわばり、どう触れられたらいいのかわからない、といった様子だった。

私はゆっくりと彼に背中に手を這わせた。手のひらをぴったりとつけ、一定のリズムを保ちながら。

数回そうすると、彼の肩から力が抜けた。

浅く震える息を吐き出すと、彼の頭が下がり、やがてその顔は私の首筋に押し付けられた。

そして彼は、強く、しがみついてきた。

車の中は静まり返っていた。

外には車の往来すらなかった。

彼が身を寄せて腕を私に回したときにかすかに鳴る、レザーシートの軋む音だけが響いた。

彼は長いこと、何も話さなかった。

ようやく口を開いたとき、その声は低く、一語一語を発するのに努力がいるかのように途切れ途切れだ...

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