第170話

私を好きになる努力をしてほしい、と彼は言った。もしこれが本物なら、二人の関係がどうなるか見てほしい、と。

私に断る理由はなかった。

「わかったわ」と私は答えた。

彼の表情ががらりと変わった。

いつも浮かべていた、あの慎重で無表情な仮面が、ぱかりと割れた。

口元が満足げな曲線を描いて引きつる。

彼が口を開く前に、私は割って入った。「でも、一年って約束したわ。その後は離婚するって」

彼に惹かれ始めていることには、もうしばらく前から気づいていた。

でも、そこには契約があった。期限があった。

おとぎ話なんかじゃなく、契約書だったのだ。

「ああ」と彼は静かに言った。「そうだな」

一瞬視線を外し、また私に...

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