第179話

爪先立ちになって、彼の唇に自分のそれを押し付けた。

私の唇が、彼の微笑みの端に触れた。

「明けましておめでとう」

三十分後、私たちはミッドタウン・クロッシングを後にした。

何もかもが奇妙に見えた。

通りはいつもと同じなのに、どこか違う。

寒さで手の感覚は麻痺していた。

耳鳴りもまだ続いている。

それが風の音なのか、それとも私の脳がショートしているのか、判断がつかなかった。

アパートに戻る頃には、足の痙攣がひどくて、カウンターに寄りかからないとブーツも脱げないほどだった。

シャワーを浴びている最中に、もう少しで気を失いそうになった。

お湯は熱すぎたけれど、どうでもよかった。

ベッドに這い上が...

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