第191話

翌朝、アシュトンが目を覚ましたとき、彼女はもういなかった。

彼は一人でテーブルに座り、クロフトテック社の買収契約書に目を通しながら、残っていた卵を平らげた。

完璧な焼き加減――いつものカルメンの腕だ。

彼の電話が鳴った。

「ローランさん、今しがた映像を送りました」とドミニクが言った。

それは昨夜、八時過ぎ、アトラス・ルームのすぐ外で撮られた防犯カメラの映像だった。

映像には、一行が中に入っていく様子が映っていた。

ローワンはアシュトンから二人分離れた場所にいた。明らかに距離がある。親密さのかけらもない。

「随分と時間がかかったな」

ミラベラは彼を信じてくれた。

今さら映像を見ても、ほとんど意味...

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