第212話

歩道に出た。

ガラスの自動ドアが背後で閉まり、最後の騒音が遮断される。

ファブリツィオは腕時計を確認し、それから付け加えた。「明日までしかスカイラインにいないんです。発つ前に連絡をもらえると嬉しいな」

私は頷いた。「考えておきます」

彼は必要以上に長く、じっと私の目を見つめた。

その時、縁石にタイヤが擦れる甲高い音が響いた。

黒いマイバッハが、私のブーツから半メートルほどの位置に滑り込んできて停まった。

後部座席のドアが開く。

アシュトンが降りてきた。

黒のボンバージャケット、ヴィンテージウォッシュのジーンズ、金の細いフレームの黒いサングラス。

髪はいつもより乱れ、濡れた前髪がこめかみに張り付...

ログインして続きを読む