第236話

喧騒が静まった。

コーデュロイのブレザーを着た男が、大げさに鼻を鳴らして部屋を飛び出していく。

「なんて日だ、時間の無駄だったな」と、誰かが背後でつぶやいた。「家にいればよかったぜ」

「行こう。こいつは空振りだった」

人々がぽつりぽつりと出て行き始めた。

ハンドバッグがパチンと閉じられ、椅子の背からスーツの上着がひったくられるように取られていく。

数分も経たないうちに部屋は空っぽになり、残されたのは私とアシュトンだけだった。

グウェンドリンは戸口で一瞬ためらった後、アシュトンに毒々しい視線を投げつけ、足音を荒げて去っていった。

アシュトンはゆっくりとベッドに歩み寄った。

彼は老人の顔を覗き込ん...

ログインして続きを読む