第249話

やがて、ファブリツィオが言った。「ええ、結構です。ただ、内密に。それだけですよ」

昼食後、彼は目に見えて上機嫌になった。それには私も多少は貢献できたと思いたいところだ。

今夜、アシュトンに報告書を見せるつもりだった。婚約者がフィナンシャル・アナリストを兼任しちゃいけないなんて、誰が決めた?

彼がすべて問題ないと言ってくれたら、ヴァルモン&シーに投資しよう。お金は十分にある――まあ、厳密に言えばアシュトンのお金だけど、好きに使っていいと言ってくれたものだ。それでも、まずは彼に相談するつもりだった。

午後の時間は心地よく過ぎていった。パリはヨーロッパの美食の都という評判に違わない。ファブリ...

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