第260話

シルヴァ警部が近づいてきて、ブラウスの胸元に手を伸ばした。

私はそのボタンを彼の手からひったくった。「自分でできますから」

「精密機器だ」と彼が言った。「慎重に扱わないと」

「ブラウスにボタンを一つ留めるくらい、私にもできます。ご親切にどうも」

彼の表情があくまで仕事に徹したものでなく、この三日間で彼の人となりをある程度把握していなかったとしたら、体を触ろうとしているのかと誤解したかもしれない。だが、この男には仕事という設定しかないのだ。

「この小型カメラは、君の視界に入る半径二十メートル以内すべてを捉える」一歩下がりながら彼が言う。「レンズが外を向いて、角度がずれていないか確認しろ」

私は視...

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