第261話

「アシュトン! どうしてここに?」

最悪のタイミングで現れた邪魔者に、私は驚きと怒りのどちらをより強く感じているのか、自分でもわからなかった。

だが、アシュトンが何を感じているかははっきりとわかった。「殺意」という言葉ですら、彼が浮かべている表情を表すには生ぬるい。

私は思わず一歩後ずさった。

「ロ、ローランさん」ファブリツィオはよろめきながら立ち上がり、手を差し出した。

酔っていても、礼儀は忘れていないらしい。

アシュトンは彼を無視した。

彼の視線が私に突き刺さり、首筋の毛が逆立つのがわかった。「行くぞ」

「行くって? どこへ? 待って、無理よ!」

ファブリツィオは、彼が帳簿をごまかすのを手...

ログインして続きを読む