第273話

「本当に変わったわね、あなた」俺の方を振り向き、リアが言った。「クルーズ船に乗りたいなんて言うから、冗談だと思ってたのに」

「だが、現にこうしている」俺は手すりのそばに立ち、地中海を眺めた。九月の黄昏が、海を紫と金の移り変わる色合いに染め上げ、沈みゆく太陽と共に地平線が燃えている。

誰もが舞踏会へ行ったわけではなかった。デッキの上では、若い乗客たちがいくつかのグループに分かれて談笑している。ピンク色の空を背景に自撮りをする者、水面から弧を描いて跳ねるイルカを興奮した様子で指さす者もいる。舞踏会場のドアからは微かに音楽が流れてくるが、ここでは笑い声と、波が船体を打つ音、そしてカメラのシャッター音...

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